血栓溶解療法(t-PA静注療法)

脳梗塞の特効薬 ‘ t-PA’

脳卒中・脳梗塞とは何か

脳卒中は脳の血管が詰まったり破れたりする病気の総称で、脳梗塞は脳を養っている動脈の血流が詰まって脳細胞の一部が死んでしまう状態です。脳の動脈が詰まる原因は、(1)ラクナ梗塞、(2)アテローム血栓性脳梗塞、(3)心原性脳塞栓症に大きく分けられます。動脈硬化が原因で細い血管が詰まる場合をラクナ梗塞、太い血管が詰まる場合をアテローム血栓性脳梗塞といい、心臓の中に血の塊ができて脳の動脈に運ばれて詰まる場合を心原性脳塞栓症といいます。脳梗塞の最大の問題点は2つあります。がん、心臓病、肺炎に続いて亡くなる人が多いこと、一度罹ってしまうと後遺症が残りやすく、介護が必要になる人もいることです。

 

画期的な治療、t-PA

脳梗塞の治療にはひと昔前まで劇的な改善が見込まれる方法がありませんでした。そこで、 2005 年に日本で認可されたのが、経静脈的血栓溶解療法であるt-PA静注療法です。この薬によって 3 か月後に自立した生活を送れるようになる確率が約 1.5 倍に増えることがわかりました。しかし、この治療は症状がでてから 4.5 時間以内に薬を始められる人に限定されるため、実際この治療の恩恵を受けることができる人はわずかです。全国的にみても脳梗塞で運ばれてくる患者さんの 10 % 程度にしか投与できていないといわれています。2010年の報告では、岩手県は t-PA 使用率が全国で最下位でした。この理由として、岩手県は県土が大きいうえに、 t-PA 治療を受けることができる病院が少ないためだと考えられています。当院では 2006 年以降 t-PA 静注療法を導入し、開始当初は年に 10 ~ 20例程度でしたが、徐々に治療できる患者さんが増加してきており、近年は 30 ~ 40 例 (脳梗塞患者さん全体の 10 % 程度) に治療を行っています (図1) 。
血液には固まる性質 (凝固) とそれを溶かす性質 (線溶) があります。凝固の際に必要なのがフィブリンという物質で、 t-PA はこれを溶かすプラスミンという物質の作用を強めることで、血管に詰まった血の塊 (血栓) を溶かします。これがt-PAが効く機序です。

t-PA による治療は、出血が起こりやすくなるため、脳出血の既往がある場合、最近胃腸や尿からの出血がある場合や大きな手術を受けた場合は治療を受けることができません。また、治療後の副作用としても出血が挙げられ、特に脳出血の頻度は約 5 %、その他の胃腸、膀胱、肺などの出血はいずれも 1 %未満といわれています。

 

なるべく早く t-PA を投与するために

t-PA は早く開始するほど症状が良くなることが証明されています。我々は t-PA 治療ができるかもしれない患者さんが運ばれて来ることが分かった時点で、すぐに開始できるように医師、看護師、放射線技師、検査技師が協力して診療にあたっています。しかし、最も大切なのは市民の方が脳卒中を発見してすぐ救急車を呼ぶことです。脳卒中の症状をいち早く見つける方法として、「ACT-FAST」運動があります (図2) 。「FAST」とは脳卒中の典型的な 3 つの症状の頭文字と発症時間「Time」を組みあせた言葉です。もし身の回りの方で脳卒中と思われたら、すぐ救急車を呼びましょう。

 

図1:2012年9月からt-PAの対象患者さんが4.5時間へ延長されました。年々治療数は増えています。

図2:脳卒中を疑ったら「FAST」を実践しましょう。

a : 右の脳 (向かって右側) の血管が詰まっています。

b : t-PA を使い血液の流れが再開しました。

 

図3:当院のt-PA治療までの流れです。t-PAを投与する際には家族(投与を決定できる家族)の同意が必要なことが多いため、救急車で来院する際に必ず家族の同乗をお願いしたいと思います。

 

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