薬剤部
お薬Q&A
漢方薬は食前に飲まないとダメ?
病院で漢方薬を処方され、薬剤師から食前に飲んでくださいと説明されることがあります。それは、食前の服用の方が一般に吸収がよいとされるため、そのような指導になっています。
しかし、患者さんによっては他の薬が食後だから食前の漢方はどうしても飲み忘れてしまうとか、漢方薬の独特な味が吐き気を催すなどの問題がある場合があります。
最近の研究では、食後に飲んだ場合、食前に飲んだときより吸収速度は下がりますが最終的な効果の面では大差がないこともわかってきました。
このようなことから、ある一部の漢方薬を除いては食後服用でも差し支えないと思われます。
“ある一部”とは芳香性健胃薬とよばれる胃腸に効く生薬が含まれている漢方薬などで、その独特な味自体が胃酸の分泌を増加させるはたらきを持つものなどです。
従って、このような漢方薬を飲みづらいといってオブラートに包んで飲むことはしないでくださいね。
薬が飲みづらいときには?
薬の中には、噛んだり、すりつぶして飲んではいけないものがあります。
最近の薬は精巧につくられ、薬の内部が2層3層の構造につくられているものもあります。ですから、医師または薬剤師の指示なく勝手に元のかたちをくずして飲むことはやめましょう。
そこで、薬をオブラートに包んで飲む方法が昔からありますが、最近ではいろいろな種類のオブラートが市販されています。
粉薬をこぼれないように飲む袋状のものや、小児用のゼリータイプのものなど様々です。詳しくは街の薬局で聞いてみてください。
妊娠中は薬を飲んでいいの?
ほとんどの薬は、妊娠時の安全性が確認されているわけではありませんが、胎児に及ぼすリスクは少ないと考えられています。また、薬の胎児に与えるリスクは、それ自体の毒性の他に、妊娠中の時期(妊娠周期)によっても変わってきます。奇形の多くは、器官形成期(妊娠2~4ヶ月)に起こります。よって、催奇形性という意味で最も注意すべきこの時期です。しかし、薬によってそれ以外の時期であっても胎児へ影響を与える場合がありますので、必ず医師の指示のもとで薬を服用することが大切です。
また、妊娠に気付かずに薬を服用してしまった場合、非常に不安に思われることと思います。一部の薬を除いてほとんどの薬は、薬を服用していない場合にも起こる先天異常の発生率を増加させることはほとんどないと考えています。ですので、一人で悩まずに医師へ相談しましょう。できれば、このような不安を抱かずに済むよう、妊娠の可能性のある場合は不要な薬を服用しないように心がけることも大切です。
妊娠中だからといって、薬の服用をすべて我慢しなければならないというわけではありません。母体の健康状態が悪くなると、胎児にまで影響がでる場合もあるため、服用を推奨されている薬もあります。慢性の病気で薬を服用しなければならない方も同様に、薬を飲まなければ母体ならず逆に胎児にまで影響がでる場合があります。慢性の病気で治療中に妊娠を希望される場合は、事前に医師とよく相談しておきましょう。妊娠してからあわてなくて済みますし、より影響の少ない薬へ変更することもできます。医師の管理のもと、安心して薬を服用してください。また、疑問に思ったことは遠慮なく医師または薬剤師へ質問してください
むやみに解熱するとかぜを悪化させる?
かぜをひいて熱のあるとき、熱さましの薬、いわゆる解熱鎮痛薬と呼ばれる薬をもらいます。人の体温は36度台が平熱とされていますが、かぜをひいて37度台の微熱でも具合が悪いものです。
この場合、熱が38度以下でむやみに解熱鎮痛薬を使ってしまうと、逆にかぜの治りを遅らせてしまう場合があります。
かぜはウイルス性疾患のため、この諸悪の根源たるウイルスを退治しないことにはかぜは完治しません。
そこで、人間の体はよくできたもので、発熱することによりこのウイルスをやっつける仕組みになっています。ですから、ある程度は体温を高めにセットしておかないとかぜはいつまでたっても治らないことになってしまうのです。
熱さましを使う目安としては38度を超えたあたりとされています。
また、お子さんが熱を出したとき、特にこれがインフルエンザウイルスであった場合には通常の熱さましを飲んだり、坐薬を使用すると逆にインフルエンザの症状が悪化してしまうことが知られています。この場合、インフルエンザに使用してはいけない解熱鎮痛剤というものがあります。
したがって、「この間お母さんがかぜでもらった熱さましの坐薬を、〇〇ちゃんが熱があるから使おう」というのは大変危険な行為です。
それから意外と知られていないのは、解熱鎮痛薬の副作用に「血圧低下」があるということです。
ご高齢の方のかぜに、むやみに成人量の解熱剤を使うと血圧が下がりすぎて、そのままぽっくり・・・なんてちょっと笑えない話も実際にありますから、どんな薬でも勝手な判断で使うことは禁物です。
かぜには抗生物質が効かない?
かぜをひいて病院にかかると、お医者さんから抗生物質を処方されることがあります。抗生物質とは、微生物(細菌)に効果を持つ薬のことをいいますが、実はかぜはほとんどウイルス感染によるものです。
ということは、ウイルス≠細菌ですから抗生物質はほとんどのかぜに全く効果がないということになります。それでは、なぜ医師が抗生物質を処方するかというと、かぜにより2次感染を予防することにその意義があります。
かぜをこじらせると、どんどんかぜのドツボにはまってしまいますよね。その原因はウイルス以外の細菌が悪さしだすからなのです。
そこで、抗生物質はかぜで抵抗力が落ちた人体の中で、その他細菌が悪さをするのを防ぐために飲むのです。
ですから、抗生物質は”直接は”かぜを治せないのですが、かぜ退治には1役も2役もかってくれる頼もしい薬なのです。
勝手に止めると逆に病気を悪化させる薬がある?
症状がよくなれば薬は飲みたくなくなるというのが人情というもの。
でも、ちょっと待ってください。便秘薬や頭痛薬など頓用での薬ならいざ知らず、毎日服用するよう指示された薬はそうはいきません。医師は定期的に検査をして、その薬がちゃんと効いているかどうか血液中の薬の量を調べる場合があります。
飲めといったものを飲まずに飲んだふりをすると、医師はその患者さんがてっきり薬を飲んでいるものと判断し、きっとその薬の量を増やすでしょう。これは、大きな問題です。1つには、増量された薬を患者さんが飲んでしまう可能性。もう1つは、不必要な薬を処方したことにより医療費を無駄にしてしまうということです。
薬には大きく分けて2種類あります。1つは病気そのものを治療する薬、もう1つは、病気の症状がでないように抑える薬。
前者は抗ウイルス薬のように、病気の原因そのものを治療する薬。後者は高血圧の薬などのように、その薬を飲むことによってその症状がでるのを抑える薬です。
したがって、後者の場合、たとえば血圧の薬を飲まなければ血圧は上がってしまいますし、コレステロールの薬を飲まなければコレステロールが高くなるという具合です。
つまり、勝手に止めてはいけない薬というのは後者の方になります。
ある種の胃薬の中には、服用を勝手に中止したことによって、それまで抑えられてていた胃酸がドッと噴出され、逆に胃を荒らしてしまう薬があるので要注意です。
また、貧血で鉄剤をお飲みの方も、数週間飲んで症状がよくなったからといって勝手に中止すると、体の中への鉄分の補給が不十分なため再び貧血が悪化してしまうということがありますので、こちらも注意が必要です。
どちらも、比較的長く飲み続けなければならない薬ですので、医師の指示通り飲んでくださいね。
病気の症状によっては、むやみに飲まないほうがいい薬もある?
ちょっと神経質な方に多いのが、具合が悪いとすぐ薬を飲みたがるということです。
これはちょっとした危険をはらんでいます。たとえば、下痢止めや咳止めの薬がそうです。下痢にもろいろなタイプがありますが、その中でも細菌性の下痢の場合、下痢には原因となっている細菌を速く体の外へ出そうとする生体の防御反応なのです。
ですから、下痢止めで下痢を止めてしまうと、細菌が体の中にとどまってしまい、ますます病気の治りが悪くなってしまいます。従ってこのような場合、まず整腸薬を服用して、それでも下痢が治まらないときに初めて下痢止めを飲むという風に段階を踏んだほうが無難です。
また、咳止めの場合も同じようなことがいえます。痰を伴う咳の場合、人間の体は咳をすることによってその痰を気管支や肺から取り除くようにはたらきます。ですから、咳止めを飲むことで、痰が排出されなくなり、病気の治りを遅らせてしまうばかりか、小さなお子さんや高齢の方ではその痰を詰まらせ窒息してしまう場合もあるので要注意です。
とりすぎてはいけないビタミンがある?
ビタミンの種類は現在発見されているだけで、二十種類以上あります。ビタミンAにはじまり、B、C、D、E、H、K、L、P、U ・・・・。
このビタミンは、水に溶ける水溶性とあぶらに溶けやすい脂溶性とに分けられます。ほとんどが水溶性の中で、A、D、E、Kだけが脂溶性です。
この脂溶性ビタミンは必要量以上とりすぎると、逆に副作用(過敏性)をまねくことが知られています。たとえば、ビタミンAをとりすぎた場合、脳圧が高くなったり、手足の腫れや痛みなどが起こります。また、ビタミンDは本来、骨や歯の形成を促すはたらきがあるのですが、とりすぎると逆に骨がもろくなってもろくなって折れやすくなります。
また、この脂溶性ビタミンは妊婦さんが服用する際には特に注意をしていただきたいのですが、とりすぎた場合、生まれてきる子供が奇形になりやすくなるということです。
このように、何でもかんでもビタミンなどの健康食品を多量にとりすぎることは逆に体によくない場合もあるのでちゃんと覚えておいてくださいね。
かぜで抗生物質が処方されたら・・・
かぜの原因はウイルスが70~80%を占めます。かぜの基本的な治療法はないため、薬で症状を抑えるといった方法が一般的です。また、のどの腫れや痰を伴う場合のように、細菌による2次感染が認められるときには抗生物質が処方されます。
この抗生物質はかぜの場合、5日から1週間処方されるのが普通ですが、症状が治まったからといって服用を勝手に中止してしまうと、細菌が再び増殖してしまう可能性があるのでちゃんと指示通り飲んでくださいね。
熱さましの座薬の使い方
かぜをひいて熱があるとき、熱さましの坐薬を処方されるときがあります。
熱さましの坐薬の成分は解熱鎮痛薬と呼ばれる部類のものです。
一般に、小児と大人に使用される解熱鎮痛剤の種類は異なり、小児には比較的作用が穏やかで副作用も少ないアセトアミノフェンという薬剤が使われます。
このアセトアミノフェンは、坐薬を挿入してから約30分位から効果が現れ始め、約4時間効き目が持続します。
坐薬の使い方としては、体温が38度を超えたあたりから使用してください。また、挿入後も熱が下がらず、再度使用する場合の間隔は6時間以上空けて使用してください。
ただし、38度以上あっても、子供が元気な場合にはしばらく様子をみてください。発熱というのは体が外敵から身を守る反応で、体の免疫力を高める作用もあります。ですから、むやみな解熱は逆に病気の治りを遅らせてしまう可能性がありますのでご注意してください。
子どもに薬をうまく飲ませる方法
大人が薬を飲むとき、普通は水やぬるま湯で飲みますが、小さな子供の場合、粉薬で処方されることが多く、そのまま水やぬるま湯で飲むと薬の味がして子供がむずがる場合がほとんどではないでしょうか。そんな時、小さなお子さんをお持ちの若いお母さん方は途方にくれることがあると思います。
一般に、そんな時は子供が好きなものでごまかして(表現は悪いですが)飲ませてしまう方法があります。ただし、粉ミルクや牛乳に溶いて飲ませてしまうと、それ以降子供がミルク嫌いになってしまうことがあります。また、ジュースに溶いて飲ませるという方法がありますが、特に柑橘系のジュースで溶くと、薬の苦味が増してますます飲みづらくなってしまうので避けたほうが無難です。
それ以外の方法としては、ジャムやヨーグルト、アイスクリーム、氷(かき氷)と一緒に与える方法があります。冷たいもので与えると、味覚が麻痺して薬の味をわからなくさせてしまう効果があります。ただし、この場合も、冷たいものはお腹をこわす原因にもなるため注意が必要です。また、アイスクリームのカルシウム分がある種の抗生物質の効果を弱めてしまう場合があります。
その他、ゼリー状のオブラートというのが市販されていて、こちらは粉薬をゼリーで包み込んで薬の味を紛らわせる効果があります。
いずれにしても、一番いい方法はお子さんの好みを知っているお母さんだと思います。根気強く飲ませてあげてくださいね。
授乳中にのんではいけない薬
母乳を与えているお母さんの場合、授乳中に飲んではいけない薬がいくつかあります。
母乳は脂肪分を多く含むため、脂に溶けやすい薬が授乳中にも移行しやすくなります。一般に、薬を飲んでいるお母さんが母乳を与える場合、子供がが比較的長時間睡眠する前に薬を服用しておき、子供が起きたら母乳を与えるという方法も知られてはいますが、その場合、最低5時間以上は間隔をあける必要があります。ただし、この場合もいくら間隔を空けたとしても飲ませてはいけない薬もありますので、医師の指示を仰ぐ必要があります。
薬剤名 | 主な商品名 | 主な効能 |
炭酸リチウム | リーマス | 抗そう薬 |
メシル酸プロモクリプチン | バーロデル | パーキンソン症候群他 |
アスピリン | バファリン | 消炎、鎮痛作用、血小板凝集抑制作用 |
塩酸アミオダロン | アンカロン | 不整脈 |
シメチジン | タガメット | 胃炎、消化性潰瘍 |
チアマゾール | メルカゾール | 抗甲状腺薬 |
酒石酸エルゴタミン | カフェルゴット | 片頭痛 |
シクロスポリン | サンディミュン | 免疫抑制作用 |
金チオリンゴ酸ナトリウム | シオゾール | 慢性関節リウマチ |
メトロニダゾール | フラジール | トリコモナス症 |
チニダゾール | ファシジン | トリコモナス症 |
シクロホスファミド | エンドキサン | 抗腫瘍作用 |
塩酸ドキソルビシン | アドリアシン | 抗腫瘍作用 |
メトトリキサート | メソトレキセート | 殺細胞作用 |
アルコール | ||
放射性医薬品 | ||
麻薬 |
点耳薬を使う場合の注意点
一般に、点耳薬と呼ばれる耳の中につける薬の場合、よく冷えた状態でそのまま使用すると、めまいがおこる可能性があります。
したがって、冷蔵庫に保管するように指示された点耳薬の場合、使用する際には手の中で握って人肌程度まで温めてから使用するとめまいが起こりにくくなりますので試してみてください。
アトピー性皮膚炎の方に好ましい制汗剤?
一般に、アトピー性皮膚炎の方は炎症がおきていない部分の皮膚の内部でも何らかの異常が起きているとされています。
最近、CMなどで「セラミド」という言葉をよく聞きます。このセラミドは皮膚の角質細胞をつなぎとめる役割を持っていますが、アトピーの方ではこのセラミドの量が正常よりも低下していると言われています。このことにより、アトピーの方の皮膚は正常の皮膚よりも外界の刺激に弱いことになります。従って、いくら制汗剤といえども中には使用するとアトピーの症状を悪化させてしまうものもあるので要注意です。
アトピーの方でも比較的安全に使用できる制汗剤は、無香料でかつアルコール分を含まないものが適当と思われます。なぜなら、どちらも、刺激性の物質だからです。
種類別で選ぶと、噴霧式のミスとタイプと液体を直接塗るロールタイプのものにはほとんどアルコールが含まれていますので避けたほうが無難です。また、スプレー式のものは吸い込むと喘息などの発作を悪化させる場合もありますが、アトピーの方は喘息を持っている場合が多いのでこれも避けたほうがよさそうです。すると、残るはステックタイプのもの。これは、固形で直接体に塗りつけるもので、比較的刺激的な物質を含んでいないためアトピーの方にも安心して使っていただけると思います。でも、制汗剤1本買うにしても、念のため薬剤師のいる薬局で成分等を確かめてから購入したほうが良いと思います。
喘息の薬と肉料理は相性が悪い?
喘息薬の中でも、テオフィリンという気管支拡張作用のたるや薬剤は、焼肉と相性がよくないことが知られてます。焼肉のこげた部分に含まれる物質がテオフィリンを分解しやすくしてしまうのです。特に、こげ身の多くなる炭火焼き肉の場合、このテオフィリンの効果を約20%も弱めるというデータもあります。
これに類似して、たばこの煙に含まれる成分にも同様な物質が含まれているため、喘息でテオフィリンを飲んでいる方にたばこはお勧めできません。といいますが、それ以前にたばこの煙自体が喘息発作を引き起こす原因にもなりますのでご注意を!
また、焼肉だけでなく、肉類だけに片寄り、炭水化物をあまり食べない食事を続けた場合も同様にテオフィリンの効果が落ちてしまいます。つまり、バランスの取れた食事をこころがけることが大切なのです。
ちなみに逆にテオフィリンの分解を遅らせ、血中濃度を上昇させるものにお酒(大量の飲酒)が知られています。