年間3,335回の診療支援、1日平均9人の医師が応援のため不在になる

医療費抑制政策と長年続いた医学部入学定員数の削減が、医師不足、医師の偏在、地域医療崩壊をもたらしました。医師の偏在には診療科偏在、地域偏在、開業医と勤務医などありますが、岩手県は広大な県土に、人口が比較的多い地域と全くの過疎地域が混在しており、医師の絶対数が不足しているうえに沿岸、県北地域を筆頭に偏在が著明です。人口10万人あたり医師数は全国平均が233.6人(2014年12月現在)に対し、岩手県は196人、さらに沿岸、県北地域は120人程度と全国平均の半数程度の医師しかいないことになり、厳しい医師不足となっています。

当院のミッションである地域医療支援は、平成26年度は1日平均9人の医師が土日や当直を含め医師不足の地域病院に支援にいく計算になりました。当院では昭和62年「地域医療支援部」を設置、病院の基本理念、行動指針に地域医療支援の必要性を記載、県内の公的病院・診療所からの診療支援要請に対応して医師を派遣しています。要請がきた場合、まず地域医療支援部で支援内容について検討し、依頼された専門診療科の意見を聞いて調整し、最終的には医局会で説明して院長の承認を受けて診療支援を開始するという手続きをとっています。ただでさえ忙しい医師に診療支援にいってもらうのは非常にむすかしいものの病院のミッションとして掲げ、当院が担う重要な役割の1つと認識して支援に行っています。大学医局医師が行っているいわゆるアルバイトとは全く性格が異なり、謝礼は基本的にはわずかな出張手当のみです。

また初期臨床研修における地域医療研修の充実は必須と考えており、2年次研修医には2か月総合診療医として地域病院に勤務し、地域の医療の現状の把握と対策を学び、地域医療に対するマインドの醸成を培っています。後期研修医(レジデント)は平成16年度から正規医師として採用、雇用の条件に年間3か月間の地域医療支援を行うことを明確に書き込んでいます。実際は1ヵ月間の地域病院勤務(兼務発令)、平日のプライマリーケア診療応援、土日・休日当直応援で、残りの2か月間の義務を果たす形になります。専門医(指導医)の地域医療支援に対する役割、指導を明確化するとともに、地域医療支援の重要性については、新たに当院に赴任してきた専門家の医師には最初の段階でオリエンテーションを行い、地域医療支援に対する意識を醸成しています。平成26年度の診療応援回数は年間3,335回となり、医師不足の県内公的病院にレジデント、各科専門医を派遣しました。1日平均9名の医師が診療応援のために不在となっています。またへき地医療拠点病院としていわゆるへき地にある診療所にも定期的に直接医師を派遣しており、平成28年1月13日被災して機能を失った小本診療所が新診療所を開設した際には、開所式初日院長が診療応援に赴きました(図2)。

この医師不足を解消するために、国は医学部の定員を約1,500名増やし、2025年までには医師の受給バランスは満たされる予定ですが、医師の地域偏在はいくら医師数が増加してもなかなか解決できません。自治医科大学、地域枠で入学した医学生頼みの現状です。医師の計画配置(一定の期間地域勤務を義務とする)あるいは新専門医制度の発足と同時に各地域における専門医数を真剣に議論し、偏在を解消する必要はあるかと思います。現状では基幹病院からの医師派遣体制は必須であり、当院はその支援体制の充実にさらに努力していきたいと考えています。

図2

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