災害医療体制の整備
1 当院の災害医療の役割
当院は岩手県から地域災害拠点病院の指定を受けており、盛岡医療圏近郊で災害が起こった際に救急医療活動の拠点として傷病者を受入れ、また、被災地から離れている場合には被災地に医療支援を行う役割を担っています。
2 災害医療体制の整備
当院は、災害医療部が中心となり、24時間いつでも災害に対する緊急対応ができるような体制を構築しています。
○災害マニュアルに関すること
災害には、大地震など当院も被災する災害と、大規模な事故など当院は被災しない災害に分けられます。当院が被災するとしないでは、ライフラインを含めた物的あるいは人的被災等の病院機能に関わることだけに、大きな違いがあります。
また、平日の日中に災害が起こるか、夜中に災害が起こるかも大きな違いがあります。平日の日中はたくさんのスタッフがいるのに対し、夜間は夜勤当番のスタッフしかいません。部門によっては、スタッフが誰もいないところもあります。このように、当院の被災の有無、災害の時間帯(日中と夜間)により対応も大きく異なることから、当院ではそれぞれに対応できるように4種類の災害マニュアルを整備しています。
○災害訓練に関すること
当院では、いつ災害が起こっても迅速かつ冷静に、そして的確に対応できるように定期的に訓練を行って実際の災害に備えています。訓練は総合災害訓練と部門災害訓練を行っています。総合災害訓練は、院内の全部門が参加する訓練で年2回行っています。盛岡市近郊で大地震が発生し、一部病院機能が停止した状態で傷病者を受け入れるという設定で、傷病者は緊急度や重症度によって治療の優先度を決めるトリアージエリアを経由して、4つのエリアに振り分けられます。それぞれのエリアでは、初療を行い適切な治療が受けられる手術室やICUなどに傷病者を搬送することになります。また、災害対策本部には災害情報と院内の診療機能の情報から災害医療の方針を決め、円滑に実行できるように調整する役割があります。これら一連の流れを訓練で確認することになります。部門災害訓練は、病棟や検査室、手術部など部門ごとに行う訓練です。それぞれの部門には、上に示した災害マニュアルとは別に、部門ごとのマニュアルが整備されています。マニュアルには災害発生時からの対応の流れ、役割分担、役割ごとの活動が示されていますので、訓練ではそれらを確認することになります。
○医療支援に関すること
大規模災害発生時には、盛岡医療圏の内外に関わらず医療支援チームを編成して被災地で災害医療を提供する体制を整えています。医療支援チームには、DMATと急性期以降の支援チームの2つがあります。
DMATとはDisaster Medical Assistance Teamの頭文字をとって「ディーマット」と呼ばれる災害派遣医療チームのことで、災害の急性期(災害発生から48時間以内)に現場に赴き応急治療や搬送などを行ったり、被災地内の病院を支援したりする機動性を持ったチームです。DMATは、医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員など)から成り1チーム4~5人で構成され,専門的な訓練を受けた医療チームです。当院には約20名のDMAT隊員がおり、定期的な訓練や研修会にも参加して、日々スキルアップを図っています。
急性期の被災地での救急医療支援はDMATが行いますが、それが過ぎてからの亜急性期から慢性期にかけて、さらに地域の復興に至るまでは持病の管理や避難所での感染症や精神的なケアに支援の内容が変わるため、それらに特化した支援チームが編成され被災地に赴くことになります。
○インフラ等に関すること
建物:新耐震基準による建物で、震度6強の地震においても甚大な被害は起こらない。
電気:自家発電装置により3日間は病院全館をまかなえる。
水 :停電や断水がない限り水の供給は保障される。いずれかがあると、受水槽からの供給だけになるので、9時間しか供給できない。
燃料:冷暖房・空調は約7日間運転が可能である。
食糧:飲料水も含め3日分を常に確保している。
医療資機材・薬剤:少なくても3日間は供給可能な在庫を確保している。