我が国では人口の高齢化に伴い認知症高齢者数が増大しており、2025年には約700万人となり、国民のおよそ5人に1人は認知症となると予測されています。2014年に行われた調査によると、認知症高齢者の割合は一般病床15.1%、医療療養病床43.3%と報告されています。せん妄や軽度認知障害を持つ認知症高齢者も含めればその割合はさらに多いものと考えられます。
さまざまな病気で認知症の人も入院治療が必要となることがありますが、病気による苦痛、入院に伴う環境の変化などのストレスにより、幻覚や妄想などの精神症状や、興奮・暴言・暴力・徘徊などの行動症状が出現しやすくなります。それに伴い、転倒・骨折の危険が高くなり、体の機能低下や認知症の悪化が懸念され、場合によっては身体抑制や鎮静剤の使用が必要になります。加えて、入院期間も長くなりがちで、体の状態が落ち着いても元の生活に戻ることが困難になることもあります。
そこで当院では、入院治療が必要な認知症の患者様に対して、体の病気の治療を安全に行い、希望される場所へスムーズに退院できるように、【認知症ケアチーム】が活動しています。このチームは、医師、看護師、社会福祉士、薬剤師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、認知症看護認定看護師など多職種で構成されており、主治医及び病棟看護師と協力しながら、認知症の患者様の入院療養環境を支援しております。
具体的な活動としては
① 認知症ケアラウンド
チームで各病棟を巡回しながら直接、患者様の様子や病棟スタッフからの情報を交えて多職種でカンファレンスをすることで、タイムリーに対応への助言を行っております。
②認知症ケアに関する研修会の開催
認知症に関わる病院職員を対象とした認知症の病態、治療、ケア、家族支援などについての研修会を定期的に開催し、認知症対応能力の向上を目指しています。
③認知症ケアマニュアルの作成
認知症ケアに関する手順書(マニュアル)を作成し病院内に配布することで、認知症に関すること、身体拘束に関すること、鎮静を目的とした薬物の適正使用に関することなどについて、医療スタッフの認知症ケアの質の保証に役立てております。
④リンクナースとの連携
各部署に認知症看護研修修了者であるリンクナースが配置されており、【認知症ケアチーム】と協力しながら各部署での認知症ケアの推進に努めております。
【認知症ケアチーム】の活動を通じて、病院全体で医療スタッフの認知症対応能力を向上させ、認知症の患者様やご家族様が安心した入院治療ができるように努力していきます。