高精度放射線治療(IMRT.SRT.SRS.SBRT)

放射線治療は手術、抗がん剤とともにがん治療の3本柱のひとつです。

切らずに治療ができ、臓器の機能を残せることが大きな特長で、患者さんの苦痛、負担が少なく、状態の良くない患者さんや高齢の方も受けることができます。日本では放射線への漠然とした不安感がありますが、安心して受けられる治療です。治癒を目指す以外にも延命や、疼痛などのがん症状の緩和としても用いられています。院内がん患者さんの約4人に1人が当科を訪れると推定され様々ながんに対して行っています。

放射線治療は19世紀末、X線発見の翌年に行われ、その後の発展の多くは機器や技術の進歩によるものといえます。近年の特筆すべき進歩は高精度化です。がん病巣に正確に多くの放射線を照射し、一方、周辺組織の線量を減らすことで、より副作用を少なく、より治すことを目指すものです。これは、コンピュータ、デジタル医用画像、治療計画装置や照射装置の進歩によります。CT画像上に体内、がん病巣の線量を正確に表示でき(線量分布)、約20年前から治療計画の標準となっています。これにより緻密な照射が可能となり発展の基となりました。

当院では平成27年9月1日より新しい放射線治療装置の稼働を開始しました。これは最新式の外部放射線治療装置(リニアック、体の外から放射線を照射する装置、図1)で、より正確かつ効率的に治療を行えます。この機種は東北で2番目に導入されました。ビームの形状を決める装置(マルチリーフコリメータ)が精巧で、照射野をがん形状に細かく設定できます。治療台上で、位置確認の画像(CTなど)を鮮明に撮影でき、それを基に6軸方向に動く治療台が患者さんの位置、姿勢を自動補正します。照射中の呼吸運動のモニターを利用した照射が簡便に行え、また、高線量の出力が可能で短時間で照射を行えます。装置自体のデジタル化により操作も速く行えます。これらの機能を駆使して治療を行います。当院では放射線治療専門技師、放射線治療品質管理士、医学物理士といった技術、物理の専門スタッフが放射線治療に携わっています。


図1 新しく導入された外部放射線治療装置(リニアック) 

当院での高精度放射線治療を紹介します。

①    強度変調放射線(IMRT)

IMRTは立体的な腫瘍の形に合わせて放射線を照射するものです(図2)。照射中にコンピュータ制御によりビームの形状を複雑に変化させ、最終的に立体的腫瘍形状に合った照射をします。腫瘍の照射線量や当てたくない臓器、組織などの線量制限などの望ましい治療条件をコンピュータに入力し、照射方法を計算させます。当院では前立腺癌のIMRTを中心に脳腫瘍などに行っております。


前立腺癌(上)、脳腫瘍(中)のIMRT(強度変調放射線治療)線量分布図と
IMRTの照射方法(下)。照射線量が腫瘍の立体的形状に一致してしています。

②    脳定位放射線治療(SRT, SRS)

定位放射線治療はいわゆる”ピンポイント照射”といわれるもので、小病変に対し誤差1mm以内の高精度で立体的に腫瘍の形状にあわせ、3次元的に多方向から放射線を集中して当てる照射法です。脳の定位放射線治療は、頭蓋内の病変に対し高線量を病巣に集中する一方、周辺の正常神経組織の線量を低くします。転移性脳腫瘍を中心に他の髄膜腫、聴神経鞘腫、脳腫瘍も行っております。

③    体幹部定位放射線治療(SBRT)

体幹部定位放射線治療とは胸部や腹部の小病巣に対して脳と同様に放射線を集中する照射法で、呼吸運動をモニターしながらその情報を利用して行います。当院では、小さな肺がんと肺転移を対象に行っております(図3)。脳、肺の定位照射の照射病巣の治癒率は80-90%です。

 
脳転移(上左)と肺がん(上右)の定位照射(ピンポイント照射)の線瘻分布図。
線量ががん病巣に集中しているのがわかります。
脳定位照射(下左)と体幹部定位照射(肺、下右)の治療の様子。

最新技術の治療を紹介しましたが、病状によって通常の放射線治療も効果があることを知っておいていただきたいと思います。

サイトマップ(サイト内ページ一覧)

個人情報の取扱いについて

▲上に戻る

▼サイトマップ