脳神経超音波

当科では脳卒中特に脳梗塞を専門にしていますが、その詳細な診断のために超音波検査は必要不可欠です。我々が独自で行っている主な脳神経超音波検査は以下のものがあります。いずれも機械を病棟のベッドサイドに移動できることがメリットです。

  1. 頚動脈エコー
  2. 経頭蓋エコー
  3. 経食道心エコー
  4. 下肢静脈エコー

1. 頚動脈エコー

  • 頚部にプローベを当てて頚の血管を観察します。
  • 脳梗塞に対するアルテプラーゼ(t-PA)静注療法、カテーテルによる血栓回収療法の施行前に血管閉塞、血管解離(大動脈解離が頚動脈に波及することがある)の有無を調べています。
  • 動脈硬化による頚動脈狭窄の有無を診断でき、血行再建術(手術もしくはカテーテル治療)の適応を判断しています。

 

頚動脈が狭くなっており、血液の流れが早くなっています

          

頚動脈が詰まっているのが分かります (矢印)

大動脈解離が頚動脈に波及した状態。血管の中にフラップと呼ばれる裂け目が分かります(矢印)。

2. 経頭蓋エコー

  • 機械をこめかみにあてて脳の中の血液の流れを検査します。
  • 脳血管の狭窄、くも膜下出血後の脳血管攣縮の評価を行うことができます。

こめかみにプローベを当てます
脳の血管に色がついて血流が分かります

3. 経食道心エコー

  • この検査は一般的には心臓を専門にする循環器内科で行われていますが、我々脳梗塞を専門にする神経内科にとって必須の検査となっています。当科では同検査を独自に行っております。
  • 胃カメラのような装置を食道まで飲み込んでもらい、心臓内(特に心房)、大動脈を詳しくみるために行います。
  • 心房細動(不整脈)が起こると、心房内に血栓(血液の塊)が形成され、それが脳の血管に詰まります(心原性脳塞栓症)。これは脳梗塞全体約20%を占めると言われ、血栓の確認にはこの検査が確実です。
  • 原因不明の脳梗塞(潜因性脳梗塞といいます)が脳梗塞全体の約25%を占めると言われており、その原因として心房に小さい穴が存在する(卵円孔開存)、大動脈の動脈硬化など潜んでいるとされています。これらの原因を明確にすることができます

経食道心エコーのプローベ(矢印)           左心房内に血栓を認めます(矢印)

 

右心房から左心房に小さな泡が漏れ出ており、心房中隔に小さい穴(卵円孔開存)があることが分かります。

大動脈弓部に動脈硬化により血管壁が厚くなっている所見(プラーク)を認めます。この厚さが4mm以上になるとプラークが剥がれて脳梗塞の原因になりやすいと言われています。

4. 下肢静脈エコー

  • 脳梗塞の原因として静脈で形成された血栓が卵円孔開存などを介し、脳へ血栓が飛ぶ病態があります。この病態を奇異性脳塞栓症といいます。静脈で血栓が形成される可能性が高い場所が下肢です。脳梗塞の診断には下肢静脈の評価も必要です。
  • 下肢静脈血栓を検出できる最も感度が高い検査が下肢静脈エコーと言われています。
  • 当科独自でこの検査を行っており、特に血栓ができやすい下腿静脈(ヒラメ筋静脈、後脛骨静脈、腓骨静脈)は必ず確認しています。
  • 検査方法は下肢を圧迫し、静脈がつぶれれば血栓はなし、つぶれなければ血栓がある、といった評価方法です。

 

下腿静脈に認めた静脈血栓。圧迫しても静脈はつぶれません。

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