内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

早期胃がんの内視鏡治療と東北有数の胃がん手術

早期胃がんの内視鏡治療と拡大内視鏡観察

胃がんは罹患率で男性1位、女性3位のがんです。胃がんの原因はピロリ菌感染、喫煙、高塩分食などとされています。胃の壁はおおまかに表面から、粘膜層、粘膜下層、筋層に分けられ、表面に近い粘膜層と粘膜
下層に留まる胃がんを早期胃がんと呼んでいます。

早期胃がんの中でも、内視鏡治療の対象となるのは転移の可能性がほとんどないとされている粘膜内に留まるがんです。以前の内視鏡的切除では大きさが2cm 以下のものまでが対象で、早期胃がんでも大きいものは外科手術が必要でしたが近年、内視鏡的胃粘膜下層剥離術(胃ESD)という方法が開発され、転移の可能性がほとんどないとされる早期胃がんは、大きさに関係なく内視鏡的に切除できるようになりました。

胃ESD の方法は、まずがんの周囲にマーキングといって目じるしを付け、次に病変を持ち上げるための溶液を粘膜下層に注入します。そして、マーキングの外側の粘膜を全周にわたって切開した後、粘膜下層を剥ぐように剥離して病変を切除します(図)。

 

内視鏡で治療できる範囲が広がっている現在、内視鏡治療ができるかどうか、病変の正確な評価が重要です。内視鏡で胃がんを取り切るためには、いかに病変の広がりを正確に診断するかにかかっています。このためには拡大内視鏡といった検査が有用です。拡大内視鏡は通常の内視鏡の70 ~ 80 倍の倍率で胃の粘膜を詳細に観察することが可能で、早期胃がんの診断、範囲の診断をより正確にすることができます。

当院でも、積極的に早期胃がんや胃がんの前がん病変である胃腺腫の内視鏡治療を行っており(表)、近年は年間100 例弱の治療を行い、良好な治療成績をあげています。

  2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
胃がん 49 47 65 71 73
胃腺腫 20 13 22 22 14 
69 60 87 93 87

 

大腸がんの内視鏡治療、手術と化学療法

早期大腸がんの内視鏡治療

食習慣や生活習慣の欧米化によって大腸がんは増加し、2013(平成25)年度の部位別がん死亡率は男性が3位、女性が1位となっています。また、大腸がん検診の普及と内視鏡診断学の向上により早期がんの発見率の上昇がみられます。腺腫、がんが粘膜内や粘膜下層の浅層に留まる早期がんは内視鏡的治療の適応です。一方、粘膜下層の深層に浸潤したがんでは
数%にリンパ節への転移がみられることがあり、早期がんであっても外科的切除の適応となります。

1.内視鏡診断

通常の内視鏡観察やインジゴカルミン(色素)を散布した観察により、早期がんの浸潤の程度は約75%が診断可能とされています。粘膜下層の深層に浸潤したがんでは、緊満感、病変の崩れ、凹凸不整、ひだ集中などの所見がみられます。クリスタルバイオレット染色下の拡大内視鏡観察によるpit pattern 診断や、狭帯域光観察(NBI)での拡大観察によって診断能はさらに向上します(写真)。

2.内視鏡的治療

ポリープやおおむね2cm 以下の平坦な病変では粘膜切除術(EMR)、つまり、病変基部に生理食塩水を注入しスネアで絞扼通電して切除する方法で治療します。がんを含む大きな病変で一括での切除が必要な場合は粘膜下層剥離術(ESD)、つまり、周辺を専用ナイフで切開し粘膜下層をメスで剥離して切除する方法で治療します(図1)。切除した標本の組織所見によって、内視鏡的治療で完了か、追加外科切除が必要かを判断します。

3.当院の成績

過去5年間の内視鏡治療件数は増加傾向を示し、最近は年間900 件弱が施行され東北有数の治療件数です(図2)。

早期がんはその約10%を占めています。2012(平成24)年から保険でESD が可能となり、腫瘍径の大きな病変や線維化の高度な病変に対しても内視鏡的治療を行っています。

 

大腸がんの手術治療

大腸がんの広がり具合(進行度)は次のとおりステージ(病期)で表されますが、ステージ別で治療方法が決まってきます。

ステージ分類

ステージ0/がんが粘膜の中に留まっている。

ステージ1/がんが大腸の壁に留まっている。

ステージ2/がんが大腸の壁の外まで浸潤している。

ステージ3/リンパ節転移がある。

ステージ4/遠隔転移(肝転移、肺転移、腹膜播種)がある。

大腸がんの病期分類で、ステージ0以外のステージ1~4は基本的に手術が適応となります。手術治療では、腸管とリンパ節を切除します。リンパ節を切除する範囲は、がんの部位と進行度を考慮して決定します。がんの浸潤が周囲臓器に及んでいる場合は、可能であればその臓器も切除します。腸管を切除した後、残った腸管をつなぎ合わせます。直腸がんが肛門近くにあって腸管をつなぎ合わせることができない場合は、人工肛門(永久式)が必要になります。肛門に近い直腸がんに対して、肛門ごと直腸を切除し、永久式の人工肛門が造られる手術(直腸切断術、またはマイルズ手術)が行われることが一般の病院では多いです。このような直腸がんの中で、あまり進行していないがんについて当院は、肛門温存手術を積極的に導入しています。主に括約筋間直腸切除術 ( ISR )を行っています。直腸がんを残さず切除し、なおかつ自然肛門を温存させるのがこの手術の特徴です。あまり進行していない大腸がんに対しては、腹腔鏡手術を積極的に導入しています。当院では大腸がん手術全体の3分の2を占め、東北地方で最も多い件数の腹腔鏡手術を行っています。腹腔鏡手術を行うことで、傷が小さいため痛みが弱く、回復が早く、早期の退院が可能になります。内視鏡外科技術認定医の資格を持った専門スタッフが在籍し、万全の体制で対応しています。

 

大腸がんの化学療法

大腸がんの化学療法ではさまざまな抗がん剤が使われます。

補助化学療法

手術でがんを全て切除したと判断しても、一定の頻度で再発が起こります。大腸がん全体の再発率は17%です。再発を抑える目的で補助化学療法が行われます。ステージ2、3の大腸がんで再発が将来起こる可能性が高いがんに行います。

切除不能進行・再発大腸がんに対する化学療法

手術でがんが全て取り切れない場合(主にステージ4の大腸がん)、化学療法による治療を考えます。がんを縮小させて生存期間を延ばす効果があります。当院では化学療法専門医がいるがん化学療法科で行っています。

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